恵まれた山脈 初夏の立山
弥陀ヶ原が雪に閉ざされて
その中から 芽を吹き出していた
白樺や椈(ぶな)の林を
コマドリやカッコウが囀(さえず)っていた
その新鮮な初夏の頃

駘蕩(たいとう)とした風は高原を渡って
陽にきらめく遠近の山々は
一様に桔梗色に霞んでいた
その初夏の煙景の中を
私は 夕日を浴びながら室堂を出た
そして 地獄谷へとそぞろ歩いた

陽は今 日本海に沈まんとして
落照に映えた 夕雲の流れは
紫に霞む毛勝岳の裾をめぐって
金色に光っていた
その初夏の夕べを
私は 歩きながら考えた

静かに寂しい 高原の夕を
拡がって行く 物のけはいは
私の心の中になつかしい思い出を
はぐくみはじめた

私は自分の胸を抱きしめながら
来し方のことを追想した
そして眼を開いては
四辺の静寂に吸い込まれた

地獄谷の叫びも 浄土川の音も
遠くかすかに聞えてくる
私はふと自分の足もとを見た
そこには 道しるべに
いくつもの積み石がしてあった
賽の磧(かわら)ではないが
しかしそのような処だった
私は 何心なく石の上に
さらに石を積み重ねてみた

これは亡き友T 君のために
これは逝ける母上のために
それから これは
近く見送った 子供のためにと
一つ一つ  私は
石を積みながらしんみりとした

親しみと悲しみで胸が一杯になり
涙がとめどなく流れてきた
それを拭おうともせず
さまよっていた
夕陽は何時の間にか雲海に沈んで
その名残が 立山の頂を
去ろうとしては たゆたっていた

空と溶け合うような 藤紫の山の色
またたく星の光りのような
気高い色や光につつまれて
逝かれた人たちは
今は何をしていることだろう
私は足をとどめて そんなことを考えた
そしてまた
歩きながらそれを反芻した


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6月27日

ケンタウレア・デアルバータ

スイートサルタン


ストケシア

キク科ケンタウレア属
原産地 中央アジア・コーカサス地方
花期      6月〜8月
ヨーロッパ・アルプス地方には少し小ぶりの別の種類があります。このデアルバータが花は一番大きいようです。ヤグルマギクの仲間なので、ヤグルマギクを大きくしたような花の形です。黄色はスイートサルタンで、中東が原産地で、白やピンクなどの色があり、透明な色合いがとてもきれいです。ケンタウレアはセントウレアとも書きます。

矢車の花咲く苑を歩み来て
君の心に棲む人を問ふ

               栗木京子

京都府立植物園にて

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思 い 出      冠松次郎

キク科ストケシア属。 別名ルリギク(瑠璃菊)。 北アメリカ原産。 花期6月〜7月。 
ちょっと見た目には花の雰囲気がデアルバータに似ていますが、じっくり見ると花弁や蕊の付き方が違うので区別できます。

花の文化園にて

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