けふのうちに
とほくへいつてしまふわたくしのいもうとよ
みぞれがふつておもてはへんにあかるいのだ
      (あめゆじゅとてちてけんじゃ)
うすあかくいつそう陰惨な雲から
みぞれはびちょびちょふつてくる
      (あめゆじゅとてちてけんじゃ)
青い蓴菜のもやうのついた
これらふたつのかけた陶椀に
おまへがたべるあめゆきをとらうとして
わたくしはまがつたてつぽうだまのやうに
このくらいみぞれのなかに飛びだした
      (あめゆじゅとてちてけんじゃ)
蒼鉛いろの暗い雲から
みぞれはびちょびちょ沈んでくる
ああとし子
死ぬといふいまごろになつて
わたくしをいつしやうあかるくするために
こんなさつぱりした雪のひとわんを
おまへはわたくしにたのんだのだ
ありがたうわたくしのけなげないもうとよ
わたくしもまつすぐにすすんでゆくから
      (あめゆじゅとてちてけんじゃ)
はげしいはげしい熱やあへぎのあひだから
おまへはわたくしにたのんだのだ
  銀河や太陽 気圏などとよばれたせかいの
そらからおちた雪のさいごのひとわんを……
……ふたきれのみかげせきざいに
みぞれはさびしくたまつてゐる
わたくしはそのうへにあぶなくたち
雪と水のまつしろな二相系をたもち
すきとほるつめたい雫にみちた
このつややかな松のえだから
わたくしのやさしいいもうとの
さいごのたべものをもらつていかう
わたしたちがいっしょにそだつてきたあひだ
みなれたちゃわんのこの藍のもやうにも
もうけふおまへはわかれてしまふ
( Ora Orade Shitori egumo )
ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ
あああのとざされた病室の
くらいびやうぶやかやのなかに
やさしくあおじろく燃えてゐる
わたくしのけなげないもうとよ
この雪はどこをえらばうにも
あんまりどこもまつしろなのだ
あんなおそろしいみだれたそらから
このうつくしい雪がきたのだ
      (うまれでくるたて
       こんどはこたにわりゃのごとばかりで
       くるしまなあよにうまれてくる)
おまへがたべるこのふたわんのゆきに
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが兜率の天の食に変つて
やがておまへとみんなとに
聖い資糧をもたらすことを
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ


HOMEへ

今日の花12月目次へ

今日の花目次へ

12月16日

今日の花目次へ

次の日へ

前日へ

アマゾンユリ(アマゾン百合)

ヒガンバナ科ユーチャリス属 多年生草
原産地 南米コロンビアのアンデス山地アマゾン川流域
花期間 12月〜2月が多いが不定期
別名 アマゾンリリー、ギボウシスイセン
白い大きな六弁の花が印象的です。熱帯の花で10℃以上でないと生育しません。日本では温室でしか見ることができません。冬の温室でよく見かけますが、冬以外でも咲いているときがあります。


 あらがひてあらがへぬ生をいつか知る
 つぶさなりけり青空の鷺

                   河野愛子

写真はクリックすると1024×768ピクセルの壁紙サイズの画像がでます

永訣の朝      宮沢賢治

京都植物園観覧温室にて(12月15日)